01 カレンダー用アナログイラスト オール手書きのイラスト


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 私が手掛けたのは98・99・2000年のカレンダーですが、それ以前にも十数年の歴史があるそうです。私の前に描いてた方は日本ではなく海外に移住し現地で活動するようになり、日本からのやり取りに時間が避けなくなったそうです。そこで誰か描けそうなイラストレーターを探している時にちょうど自分が行き当たり描くことになりました。 

 この絵自体には元があり、”Kate Greenaway”という50年以上前に童話の挿絵を書いてた人のものです。
 この作家の国の気候は日本のように四季がはっきりとしてない為そのまま描くわけにはいかず、カレンダー上季節感を日本にあわせるため、配置や構図を取り直して描くようになります。夏は水辺、春は花とか。もちろん構図的に同じ物もありますが元絵は版画で印刷物の為、色合いを似せた水彩画で全部作り直します。これがある理由でちょっと大変でした。後ほどお話しましょう。

 ここには2000年のカレンダーしか乗せてないのですが、98・99もあります。同時UPをしようと思ったのですが、たった6畳+1畳ほどの押入しなかい部屋なのに、12枚のイラストボードが行方不明になってしまいました。現在行方を捜索中です。(これがあれば、画材と技術の移り変わりが見られるのですが・・・私の腕の未熟さも・・・)


2000年カレンダー用イラスト  

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 大変だった。ある理由とは。

 ずばり、「私が描く以前に別の方がこのカレンダーを描いていたこと」、それが大変の理由でした。それは、その方の原画は、印刷された元の”Kate Greenaway”の絵柄を表現するにはベストと思われる描き方をしていたのです。

 その特徴は。全体的にマットな感じ。厚い水彩用紙に主線を残し、にじみを利用。薄く広がるような色を乗せているにもかかわらず、しっかりとした彩色。おまけに、にじみと、紙が水を吸うことを利用して描かれた数色混在する灰色など。おまけによく見ると、緑の濃い部分や茶色の濃い部分(ちょっと厚く彩色している)は、表面に白い粉を噴いた感じ(カビが薄く生えたみたいだが、カビではない)と、ある特定の青、正確には水色なのだが、メタリックではないのに、光に当てるとキラキラと光るラメのようなものが見える。(ラメのような真珠系じゃなくもっと透き通ったもの、そう石(岩石)の中にこんなふうにキラキラする物があったような気がする。)等。とても言葉では言い表せない特徴のある書き方だったのです。このHPを見てる方の中には、上記の特徴で分かる方もいらっしゃると思いますが、私は、美術系の学校へは行ってなかったし高校授業は飾り程度だったので、この人の使っている画材がいったい何なのかどれ一つとっても分らないものばかりでした。

 依頼をもらった当初はカラーインクで描くつもりだったのですが、この方の原画を見せてもらった時。私に無い技術を使っていたことと、絵柄にぴったしの描き方だったので、これはマスターするしかないと思い。ある意味挑戦するつもりで解析研究が始まりました。

画材の選択。

 まず画材からと、調べ始めたのですが、これがめちゃめちゃ困難を極め、実は今だに分からずじまいなのです。とほほ。

 通常、水彩専用紙にはメーカー名の”透かし”が、どこかに入ってるはずなのですが、透かしてみてもそれらしきものは見当たらず。依頼をくれたデザイン会社の方に聞いても「分からない」との返事。絵の具は顔料系だろうってことと、一つだけ自分の古い記憶の中に”緑色に白くカビの生えたような白い粉があったのを見た”というビジョンが鉄棒に小指でぶら下がってるように頭の片隅に残っているだけで、ぶら下がってる記憶(画材)を思い出すにはいらずじまいでした。結局、いろいろ買ってきて自分で調べるしかなかったのですが、同じと思われる物が見つからず。しかも、似た効果が出せると自分でうなずける画材もみつからず、作業時間のタイムリミットもあったので、冒険するには至らず当初の予定のカラーインクで仕上げることにしたのです。

1998年カレンダ

 最初の98年カレンダーは、学生時代から使っていて自分が一番馴れている画材+今回調べた画材で使えるかもと思ったものを使用して描きました。
 使ったものは、”水彩用のイラストボード(硬め)”、”ホルベインのカラーインク”と、”ドクターマーチン”と、”消しゴム”。
(ホルベインとドクターマーチンは混合しても平気なことが分かりました。無い色はお互いのメーカーで補間できる。)
分かってはいましたが、ぜんぜん違う感じのものができてしまいました。
 余談(硬いボードだと、乾いた後、消しゴムでインクを消して色合いを浅くすることができる・・・裏技って言うか・・・ごまかしですね・・・未熟。)

1999年カレンダ

 翌年、99年カレンダーで、もう一度画材を調べ、チェックし直すことにした私は。原画を借りて、さらによく眺めました。今度は紙から吟味。原画を銀座の画材屋(ITOYA)へ持って行き、これと同じ紙が無いかと聞いてみましたが、無いと言われ。(正確には、この紙が何か分からないとのこと。)で、近い紙を自分で探したところ”アルシュ”という水彩用紙に行き当たり、紙はこれの300gを使ってみることにしました。ボードタイプじゃなくスケッチブックタイプを買ったので、彩色中のよれ防止のために水彩用紙を貼り付けて使う粘着テープ付きの発泡スチロールボードも買いました。
 この紙を使用した時、今更ながら紙質で使う画材の発色が全然違うことに気がつきました。おまけに、水を吸う紙にカラーインクを使うと、光沢が抑えられるということも今更ながら発見。
(これまで私は。画用紙、ケント紙、上質紙、コピー用紙、パステルボード、イラストボード「ごく一般的な硬くて安いやつ」くらいしか使ったことがなかった。)ちょっと目からうろこ状態。(この”アルシュ”の紙はA3くらいのもので、一枚300円・・・さすがに高い。しかし、価値あり。)
 が、やはり自分がほしい感じにはなりませんでした。光沢は半光沢といった所。98年よりはさすがにましですが、やはり、自分の狙う効果を出すには、カラーインクではだめだということが分かりました。

  

2000年カレンダー

 そして更に翌年の2000年。今度は紙以外の画材のチェックをやり直しました。が、過去に、一度全部チェックしたものばかり。チェックしたものは、ホルベインのカラーインク、ホルベインのチューブ入りの画材”HWC”、ドクターマーチン、リキテックス。ポスターカラー。
 (以前テレビで美大生とかが、顔料の粉を直接買うのを見たことがあるが、私には未知の画材で手が出ませんでした。多分それだろうと思うのですが。)

 行き詰まったその時、・・・?そういえば、何か一つ、画材を忘れているような気がしました。試しもせずに最初から頭の中から削除していた画材がまだ私の家にはありました。その画材は、自分が物心つく頃から使っているもので、しかもマット画材。ですが、これは厚く重ね塗りをしないとムラができて使えない。おまけに色を伸ばすとカスレるはず。使いにくくて、もうずっと以前に駄目押しをした画材。お分かりでしょうか?そう、その名も!!
 まさかと思い引っ張り出して試してみました。するとどうでしょう、すばらしい発色、塗りごこち!この”アルシュ”という水彩用紙に色をのせると、ホルベイン、ドクターマーチンより発色がいい。おまけに、水で溶いて薄く引き延ばしても、全然平気。カラーインクとは違い
乾いた後水に溶ける。重ね塗りができないと思っていましたが、それは、下書きが見えないほど重ね塗りをした場合と紙が水を吸わない時だけだということが分かりました。
 更に!!??・・・思い出しましたぁ。”
緑色に白くカビの生えたような白い粉があったのを見た”記憶は、小学生の頃に描いた自分の絵に同じ効果があったものだったのです。その時の画材が”。

 これで、画材決定!早速作業に取り掛った所。ばっちり狙いの効果が出せるようになりました。(カラーインクの時から試していた技があるのですが、ことごとく失敗していました。それが嘘のように「カキーン!ガキーン!!」と音が出るように決まるのです。)そして完成にこぎつけることができました。年季の入った自分の前に描かれてた方には及びもしませんが、試行錯誤の中でいつの間にか自分流が入ってたりして、使った画材は違うもののそれなりに面白い出来になりました。

その後

 この件があってからは、わたしの中で最下位だった””がトップに踊り出たのは言うまでもありません。入手しやすさでは、どの画材にも引けをとりませんしね。(コンビニでも売ってるし・・・)

この仕事で気づいたこと。

 さておき、この仕事でいろいろ気が付いたことがあります。それは、それぞれの画材には100%を引き出せる組み合わせとステージがあり。それを引き出してやるのがアナログ画材、CGも含め一番いいということがわかりました。(正確には、狙った効果が出せる画材の組み合わせ、ですけど。)今回はサクラマット水彩とアルシュの水彩用紙の組み合わせが良かったのですが、カラーインクも自分のステージ、特にホルベインなどは、同じメーカーの高級水彩紙ワットマンとの組み合わせで100%引き出せるかもしれません。(すみません、後に買ったまま試していません。)他にも、自分は使えないと思っているものも一番いい相性のものがあるでしょう。見つけるまでが大変ですが、見つけた後は、協力な自分のスキルになることは間違いないですね。

アナログとデジタル

 最近では、イラストのDATAはメールでやり取りできるし、急ぎなどの場合はそれが結構有効なことと、企業が編集にパソコンを使用する為、ほとんどアナログ画での受け渡しが無くなりました。 (当時デジタルでOKですよと売り込んだのも自分ですが。)

 又、DATAの方が持ち運びが楽で、取り込みなど手間がかからないことや、自分自身カラーなどは手書きよりスピードが早いし何より修正が楽なので(完成後の修正依頼は結構あるし・・・)、ほとんど最終作業はデジタルになりました。たまには、こういう失敗したら終わりってのも集中力を使うので楽しいですね。このタイプは手書きならでわって効果もありますし、原画の迫力ってのはそれなりにすごいものがあります。。
 特に最後の2000年カレンダーは、学生時代以来の木パネルに水張りを施して描いたこともあって、「くう〜っ、これがアナログだー」って、ちょっとその手間を楽しんでみたりして。
(時間が無い時失敗したら死ぬほどダメージがありますけど・・・まさに命がけだ)

残念な話

 ただ、残念なことにこの仕事はこの2000年カレンダーでそれ自体終わってしまいました。また、別の形でこのような仕事があれば、やりたいですね。 

  

オール手書きのイラストたちでした。

 

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