この錦絵が出来上がるまでには、試行錯誤とエピソードが・・・
1999年秋、1つの仕事依頼がありました。
なんでもNHKの大河ドラマにあわせて舞台となる土地に記念館を作り物語の歴史や背景を展示する。というものでした。
そこで、関ヶ原の合戦は有名なのに杭瀬川の戦いは歴史的に重要なエピソードなのにあまり知られていない、だからそれを展示したいが文字ばかりの流れ図のようなものでは人は見てくれない。せっかく作るのだから見てもらえるように紙芝居風にしよう。紙芝居と言っても時代が時代だから歌舞伎風の錦絵にしたい。となった訳です。(その後新聞にも採用されます。)
さて、これからが大変でした。私は歴史、超苦手で(歴史だけではないけど・・・)ろくに教科書めくった記憶がありません。絵だけ描けばいいと思いがちですが、そうはいかないのです。この時代の鎧は何風ってのがあったり。家紋や当時のキャラの年齢やどんな容姿をしていたか、また服装は?など、調べなくてはいけないからです。それを調べるのには読むしかないのでした。
次に大変だったのは、錦絵ってどう描くの?でした。私は美術学校に通ってた訳じゃないのでまったくノウハウが無く。書き始めるまでに1ヶ月ほどかかりました。
まず、どうすれば錦絵に見えるかを知る為に歴史書などの錦絵を模写したり眺めたりして解析しました。
それから仕事を頂いている出版社で錦絵を勉強したと言うイラストレーターさんが偶然近くに遊びに来てるから呼んであげるよ。ってことで話を聞くことができ、その昔、師匠が弟子にトレースさせて教える為に使った下絵集(名前忘れました;)があるから、もしかしたら”すずらん通り”なる本屋街で探せば見つかるかもしれないとアドバイスを貰いました。
行ってみるとそこはほんとに本屋ばかりの町で驚きでした。該当しそうな物を置いていそうな所をいくつか回ってみましたがこれがめったに出てこないレア物だって言われ入手できず(TT)。しかたがないので当時(まだ錦絵を版画製作してた時代)作成された本物の錦絵を1枚買って帰りました。これで一応本物の質感がつかめます。
最後はどうやって描くか。です。
本物を見てしまった私はすでに、かすれや汚れまで作りこむつもりで「こんなのどっから掘り出してきたの?」って言われれば本望だとまで無謀にも技術をかえり見ず思ってました(^^;)
だったら本当に版画で仕上げようか・・・。それとも布に描くか・・・。あいや、しかし・・・。
この時点ですでに時間を使い果たしていた私。しかも。この依頼のサイズが畳一畳くらいあるパネルに使用する為原画がでかい。
だったら今自分が使える最大の武器!デジタルを使うしかない。こんなのは過去やったこと無いのだが・・・。
こうしてPhotoshop、Illustrator、Painterと言う三大デジタルソフトを駆使し、最新技術を用いて古めかしい錦絵を作りあげたのでした。
最初は大変でしたが今は自分の技術として残ってるのでイラストレーターとしての一財産になってます(^^)
作業自体は本物の版画と同じように進みますから、デジタルといっても絵を描くに当たっては私の場合ペンや絵の具のような1画材に過ぎないものだと改めて認識した仕事でもありました。
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